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第9回 特定対応文書の管理 その1



1. 特定対応文書とは
企業が特定対応するべき文書には「職業秘密記録」や「個人情報記録」など個別に保護すべき、“重点保護管理記録”“重要記録”(「企業存続影響記録」:含む「財務関連情報記録」) の二つがあります。(図9.1)
ここでいう「職業秘密記録」とは、不正競争防止法・民事訴訟法等で保護される「営業秘密文書」を言います。企業存続影響記録とは、天災、人災等により組織活用が続けられない様なダメージを受けた場合に組織を復興させるために必要な法的記録や事業を継続するために必要な“記録”を言います。これらの記録は、復元するためには時間や費用が多大であったり、又は代替不可のものですので、記録の二重保管など管理には特別な工夫や配慮が必要となります。また、財務関連情報記録とは、金融商品取引法(日本版SOX法)でその処理が適切に行われているかどうかのトレーサビリティの確保を求められる記録です。


(図9.1)特定対応文書の区分



(図9.1)特定対応文書の区分




2. 営業秘密文書の管理
  • 文書分類基準
    不正競争防止法でいう「営業秘密」(図9.2)とは、“秘密として管理されている(「秘密管理性」)”生産方法、販売方法その他の事業活動に“有用な技術上または営業上の情報(「有用性」)“であって、“公然と知られていないもの(「非公知性」)”をいいます。


(図9.2)営業秘密文書例



(図9.2)営業秘密文書例例

  • 不正競争防止法における営業秘密の保護
    不正競争防止法では、営業秘密の不正な取得・使用・開示行為に対して当該営業秘密の使用の差し止め、損害賠償、謝罪広告など営業上の信頼回復請求権などの“民事的保護”と刑事罰(営業秘密侵害罪:5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)による“刑事的保護”があります。 刑事的保護の例としては、ハイテク製品の中核技術など社内の営業秘密を漏らすことを前提に他社に転職し、実際に情報を漏らした人への刑事罰(退職者の秘密漏えい)があります。 また、法人の役員・従業員等がその法人の業務に関して、不正に他社の営業秘密を取得して使うような場合には、その行為者のみならず法人も罰金刑(1億5千万円以下のの罰金)を科せられる法人過失罰があります。 法人が、過失免責になるためには、自社にとっての「営業秘密」とは何かを明確にし、その創出経緯が明確になっていれば、あらたに自社にとって重要な情報が入ってきた時に、それが自社のものか否かすぐに判断できます。 一方、自社の情報でない場合には、その出所を明確にすることにより他社の営業秘密か否かを判断できます。(組織として、営業秘密管理の組織的管理により、他社の営業秘密侵害の過失防止策になる)
  • 営業秘密文書の特定(日経2005.8.19より)
    営業秘密を保護するには、以下のように可能な限り具体的にその“秘密情報”を特定できるようにしておくことが大切です。また、秘密管理情報の管理区分(秘密:CONFIDENTIAL、取り扱い注意:INTERNAL USE ONLY)、開示先、保管方法、複写など取り扱い方法を決める必要もあります。
<具体的にその“秘密情報”の特定を可能にする例>
  • (秘密とする製法や情報を具体的に示す)
  • 液晶の画面が傷つきにくくする保護膜を形成するときの温度管理方法
  • 自動車のプラスティック部品用金型の寸法
  • 化粧品の成分である化学品部質の合成データ
  • 自社の通信販売を利用した顧客の購買傾向を示すデータ
  • (秘密が保存されている媒体を示す)
  • 東京本社の開発室にある「A設計書」の18-35ページに記載してある情報
  • 大阪研究所で管理している素材の合成方法を記すCD-Rにある情報

  • 営業秘密文書の管理の対策(営業秘密管理指針の概要 経済産業省参照作成)
    営業秘密文書の管理の対策には、【物的・技術的管理対策】【人的・法的管理対策】【組織的管理対策】の3つがあります。以下はその対策例です。

    • 【物的・技術的管理対策】
    • (秘密管理情報の区分)
    • 秘密情報をその他の情報から区別する
    • 秘密性のレベルを区別する(秘密、取り扱い注意等)
    • (アクセス制限)
    • アクセス権者の限定
      情報毎の秘密レベルに応じてアクセス権者を限定。
    • アクセス権者の使用・開示の範囲の限定
      特定の場所からの持出禁止等。
    • アクセスの履歴の記録
      電磁的記録へのアクセス記録のモニター等。
    • (客観的認識可能性)
    • 営業秘密の表示
      秘密であることを示す平易な記号等を記載。
    • 秘密区分の表示
      秘密性のレベル表示を電子情報の中に組み込む等。
    • 情報の形態毎の管理
    • 記録媒体の管理
      【保管時】特定の管理者が施錠等をして保管。
      【廃棄時】焼却、シュレッダーによる処理、溶解、破壊。
    • 情報自体(無体物)の管理
      【保管時】パスワード管理の徹底等。
      【廃棄時】コンピュータ廃棄時に電磁的記録を消去。
    • (施設等の管理)
    • 建物・事務所・研究所のセキュリティ
      警備員の配置、ICカードや指紋による本人確認等。
    • 部門の設置等
      社内に独立した営業秘密管理専門部署を設置等。

    • 【人的・法的管理対策】
    • 秘密保持に関する誓約書(秘密情報にアクセスした者への制約)
      入社時(全員)及び特定プロジェクト参画時(特定関与者のみ)に秘密にアクセスした者に対し、権限無しに使用・開示してはならない旨の義務を課していること等
    • 秘密情報へアクセスできる者の制限
      秘密情報の取扱者やアクセスできる権限のある者を限定していること等
    • 【組織的管理対策】
    • 秘密情報の管理者の選任(情報セキュリティの管理責任者等)
    • 秘密情報(秘密情報と個人情報)の安全管理措置のための組織・委員会等体制整備等
    • 規程・ルールの整備とその運用
    • 秘密文書のリスト整備と更新(例:指定月日、文書番号、管理担当課件名、差出者名、秘密取扱期間、配布先、作成・取得部数、廃棄年月日確認印等)
    • 秘密文書の安全管理措置の評価、見直し改善
    • 秘密文書の漏洩等事故又は違反への対処
    • 教育
    • 秘密管理の重要性や管理組織の概要、具体的な秘密文書の管理ルールについて教育を実施すること等

  • 営業秘密性が否定されないための留意点(営業秘密管理指針概要 経済産業省より)
    営業秘密が否定されないために、秘密管理性が否定された事案の特徴を参照・留意する必要があります。(図9.3)


(図9.3)秘密管理性が否定された事案の特徴



(図9.3)秘密管理性が否定された事案の特徴


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